- 03/25 ブログ引っ越しました。
- 02/21 イコプ、その人である。
- 01/20 あけましておめでとうございます!
- 12/15 知らフレギャプ問
- 11/28 切り取れ、あの祈る達人クエストを
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如来の出世には甚だ値ひがたし
無量億劫の時に一遇なり
諸の難処を離れて衆会に適け
ただ仏世尊のみ能く時に応じたまふ
(華厳経)
暮れ泥む夕暮れ。
太陽が名残惜しそうに海面上に揺蕩っていた。
東を向けば、静かな畏怖をもって世界を覆い隠すように、夜が顔をもたげる。
昼の喧騒は湿り気を帯びた夜のそれに変わりつつあるラッカランの駅前で、私は薄れゆく陽光を頼りに一通の手紙を手に取った。紅色に滲む手紙には、精緻な筆で、シンプルにこう記されている。
「 25サーバー、ガートラント城、炎の玉座の前で待つ。 レオ 」
女性らしい細い達筆に、しかし一切の迷いは感じられなかった。叩き付けるような黒い文字。強い意志が薄い紙の合間に圧縮され、じんわりと刻み込まれているようだ。
私は手紙を懐にしまうと、大きく空気を肺に吸い込んだ。
否応無しに高まる鼓動を抑えるように、胸に手を当て、目を閉じる。
「約束の時だ」
私はゆっくりと目をあけると、振り返り、静かに蒸気を上げる汽車を見上げた。
一瞬とも言える幾ばくの後、ガートラント城についた。
思いがよぎる。なんで誘っておいて石を作ってくれないんだろう?
そんな邪念が脳裏を掠めるが、ボクシングチャンピオンクラスのヘッドバンキングでその思いを避ける。むろん心象風景だ。私は思考をなるたけ止めるように、指定の場所に急いだ。
果たして、彼女はいた。
威風堂々と、そこに立っていた。
肩書きを調整することで成り立つ、斜の構え。
隙を一切と排除したその構えは、古代ガートラントの王族にのみ継承を許された「天後の構え」と言われているとはまさに今私が作った話である。
しかししかし実に堂々たる出で立ちだ。惜しむらくはその右側のあますことなくその肌を露出させた全裸のモヒカン(無関係の人)の存在感があまりにも強く、となりに立つレオが何だかアホの子みたいに見えるというというかむしろレオずっとその格好でそこで待ってたのねごめんね待たせてごめんねちょっと迷宮とか行っててごめんねと謝っておいた心の中で全力で謝っておいた。
歩み寄ると、レオはその燃える双眸を少しだけ緩めると、言った。
「行こう、私の家の前でこーてん君を待とう」
私は瞬間「あれっなんでこの人こんなとこに呼び出しておいていきなり家に戻るのかなもしかして凄いバカなのかな」と邪な考えが脳裏をよぎったが、もちろんそれは口に出さないでおく。当然これはゲームなので画面の前でいきなりしゃべりだしたらかなりの末期の状態ですからねそれは口に出さないでキーボードで上記の旨を伝えることにしました。するとレオは「ツメスキルを全部短剣にふり直そうかと思ったけどぎりぎりで我慢した」ともうちょっと常人には理解できない発言だったので諦めて「とりあえずこーてん君くるまでオシャレしようメギストリス行こう」と伝える。
「なんでメギストリスなの?」
「オシャレの町だよね」
「確かに」
私は気づくと、町の北東部に位置するメギストリスの繁華街に居た。
華やかな極彩色に身を包む若い女性達の群れ。そんな雑踏をかきわけるように進む私とレオ。
華美に酔いしれる溶けた視線に、鋭く重い我々の視線が絡み合うと、彼らは少し怯えたように目をそらした。
私たちは散髪屋の前に立った。今から始まる、絶対に負けられない戦い。我々の中での聖戦。その戦いにあいふさわしい礼節を、体をもって体現しなくてはなるまい。おねーちゃん!カタログみせて!
試行の末、果たして、完成した。
一人の、僧侶が、アストルティアに、
本当の意味で生まれ落ちた瞬間だった。
ゴータマ・イコプ・シッダールタの誕生である。
黒くつややかな髪は、しかし何にも頓着を示すことなく、無造作に束ねられる。
それはまさに仏の言う「執着に捕われない心」を体現しているよう。
遠くを見つめるその視線の先には、完全に涅槃があるのであった。
これが仏になるということか。圧倒的な使命感がコンコンと心に湧き出てくる。
仏の意志を伝えよう。
帰命せよ。ただ、我の言葉に従い、帰命せよ・・・とチームに伝える。
仏の突然の出然に動揺を隠せないチーム。
無理も無いことだ。俗世と涅槃は余りにもかけ離れているから。
しかしこの一遇をいつかは最上のことと感じてくれる日が来るに違いなかろうとそっとしておくことにする。
さて、レオはどうなったかと気にしてみる。
「イコプみてこの目」
「見た」
「良くない?気に入った」
「はあ」
まったく理解できなかったので早くこーてん君きてくれ早く早くこーてん君きてくれと念を唱えていた
きてくれた。
そして役者が集った。
僧侶二人、そして武闘家二人の構成だ。
そう、我々はこれから、悪猿、バズズに戦いを挑むのだ。
レオとこーてん君は、この日のために、様々な準備をしてくれた。
スキルを揃えたり、HPパッシブをとりにいったり、装備を集めたり。
凄く大変だっただろうと思う。
絶対に、負けられない。
最終確認をした。
イオグランテは避ける、バギムーチョは離れる、などプランからの最終チェックが入る。
気づけば、朝を迎えていた。
あの日の出を、勝利に変えよう。
準備はいいか
ととのってござる
たかがゲーム、されどゲーム。
しかし手に汗を握るほどの緊張感は、現実の世界でもそうそう無い。
私はぐっと汗を拭うと、コントローラーを握りしめる。
プランが言った。
「レオどのが当たってくれ」
でも、慣れてる人が、と戸惑うレオに、「二人が主役だから」とでも言わんばかりで微笑むプラン。
私は小さく親指を立て、こーてん君はうなずき、唇を噛み締めると、杖を構える。
そんな3人を交互に見つめると、レオはキッと前を向いた。
この日のために用意したツメを構え、小さく強く息を吐くと、バズズ、その懐に飛び込んでいったのだった。
続く。
押してケロ
無量億劫の時に一遇なり
諸の難処を離れて衆会に適け
ただ仏世尊のみ能く時に応じたまふ
(華厳経)
暮れ泥む夕暮れ。
太陽が名残惜しそうに海面上に揺蕩っていた。
東を向けば、静かな畏怖をもって世界を覆い隠すように、夜が顔をもたげる。
昼の喧騒は湿り気を帯びた夜のそれに変わりつつあるラッカランの駅前で、私は薄れゆく陽光を頼りに一通の手紙を手に取った。紅色に滲む手紙には、精緻な筆で、シンプルにこう記されている。
「 25サーバー、ガートラント城、炎の玉座の前で待つ。 レオ 」
女性らしい細い達筆に、しかし一切の迷いは感じられなかった。叩き付けるような黒い文字。強い意志が薄い紙の合間に圧縮され、じんわりと刻み込まれているようだ。
私は手紙を懐にしまうと、大きく空気を肺に吸い込んだ。
否応無しに高まる鼓動を抑えるように、胸に手を当て、目を閉じる。
「約束の時だ」
私はゆっくりと目をあけると、振り返り、静かに蒸気を上げる汽車を見上げた。
一瞬とも言える幾ばくの後、ガートラント城についた。
思いがよぎる。なんで誘っておいて石を作ってくれないんだろう?
そんな邪念が脳裏を掠めるが、ボクシングチャンピオンクラスのヘッドバンキングでその思いを避ける。むろん心象風景だ。私は思考をなるたけ止めるように、指定の場所に急いだ。
果たして、彼女はいた。
威風堂々と、そこに立っていた。
肩書きを調整することで成り立つ、斜の構え。
隙を一切と排除したその構えは、古代ガートラントの王族にのみ継承を許された「天後の構え」と言われているとはまさに今私が作った話である。
しかししかし実に堂々たる出で立ちだ。惜しむらくはその右側のあますことなくその肌を露出させた全裸のモヒカン(無関係の人)の存在感があまりにも強く、となりに立つレオが何だかアホの子みたいに見えるというというかむしろレオずっとその格好でそこで待ってたのねごめんね待たせてごめんねちょっと迷宮とか行っててごめんねと謝っておいた心の中で全力で謝っておいた。
歩み寄ると、レオはその燃える双眸を少しだけ緩めると、言った。
「行こう、私の家の前でこーてん君を待とう」
私は瞬間「あれっなんでこの人こんなとこに呼び出しておいていきなり家に戻るのかなもしかして凄いバカなのかな」と邪な考えが脳裏をよぎったが、もちろんそれは口に出さないでおく。当然これはゲームなので画面の前でいきなりしゃべりだしたらかなりの末期の状態ですからねそれは口に出さないでキーボードで上記の旨を伝えることにしました。するとレオは「ツメスキルを全部短剣にふり直そうかと思ったけどぎりぎりで我慢した」ともうちょっと常人には理解できない発言だったので諦めて「とりあえずこーてん君くるまでオシャレしようメギストリス行こう」と伝える。
「なんでメギストリスなの?」
「オシャレの町だよね」
「確かに」
私は気づくと、町の北東部に位置するメギストリスの繁華街に居た。
華やかな極彩色に身を包む若い女性達の群れ。そんな雑踏をかきわけるように進む私とレオ。
華美に酔いしれる溶けた視線に、鋭く重い我々の視線が絡み合うと、彼らは少し怯えたように目をそらした。
私たちは散髪屋の前に立った。今から始まる、絶対に負けられない戦い。我々の中での聖戦。その戦いにあいふさわしい礼節を、体をもって体現しなくてはなるまい。おねーちゃん!カタログみせて!
試行の末、果たして、完成した。
一人の、僧侶が、アストルティアに、
本当の意味で生まれ落ちた瞬間だった。
ゴータマ・イコプ・シッダールタの誕生である。
黒くつややかな髪は、しかし何にも頓着を示すことなく、無造作に束ねられる。
それはまさに仏の言う「執着に捕われない心」を体現しているよう。
遠くを見つめるその視線の先には、完全に涅槃があるのであった。
これが仏になるということか。圧倒的な使命感がコンコンと心に湧き出てくる。
仏の意志を伝えよう。
帰命せよ。ただ、我の言葉に従い、帰命せよ・・・とチームに伝える。
仏の突然の出然に動揺を隠せないチーム。
無理も無いことだ。俗世と涅槃は余りにもかけ離れているから。
しかしこの一遇をいつかは最上のことと感じてくれる日が来るに違いなかろうとそっとしておくことにする。
さて、レオはどうなったかと気にしてみる。
「イコプみてこの目」
「見た」
「良くない?気に入った」
「はあ」
まったく理解できなかったので早くこーてん君きてくれ早く早くこーてん君きてくれと念を唱えていた
きてくれた。
そして役者が集った。
僧侶二人、そして武闘家二人の構成だ。
そう、我々はこれから、悪猿、バズズに戦いを挑むのだ。
レオとこーてん君は、この日のために、様々な準備をしてくれた。
スキルを揃えたり、HPパッシブをとりにいったり、装備を集めたり。
凄く大変だっただろうと思う。
絶対に、負けられない。
最終確認をした。
イオグランテは避ける、バギムーチョは離れる、などプランからの最終チェックが入る。
気づけば、朝を迎えていた。
あの日の出を、勝利に変えよう。
準備はいいか
ととのってござる
たかがゲーム、されどゲーム。
しかし手に汗を握るほどの緊張感は、現実の世界でもそうそう無い。
私はぐっと汗を拭うと、コントローラーを握りしめる。
プランが言った。
「レオどのが当たってくれ」
でも、慣れてる人が、と戸惑うレオに、「二人が主役だから」とでも言わんばかりで微笑むプラン。
私は小さく親指を立て、こーてん君はうなずき、唇を噛み締めると、杖を構える。
そんな3人を交互に見つめると、レオはキッと前を向いた。
この日のために用意したツメを構え、小さく強く息を吐くと、バズズ、その懐に飛び込んでいったのだった。
続く。
押してケロ
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