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ポエムDeお金持ち
短編小説1 カプラさんより
ママがプールを洗う日
「カプラ、今日、プール入らなかったの?」
どうしてバレちゃったんだろう。私は胸がぎゅっと冷たくなって、動けなくなってしまった。そして、もう、涙がこぼれるのを我慢できなかった。ぽろぽろ、ぽろぽろとしたたる涙。でも、何も言えない。ママ、ごめんなさい。ママ、ごめんなさい。
カフェで一人で書いてて泣きそうになった。
ところでポエムDeお金持ち、ついにアレです!
書いてる量よりご依頼いただける数のほうが多い状況で畏れをなしましたので、
一旦注文クローズさせていただきますぅ!!
追いついてきたら、また注文再開させて頂く予定ですので、そのときはぜひ!
短編小説1 カプラさんより
ママがプールを洗う日
白昼、一人、住み慣れた部屋の中。
最近私は、週末の引っ越しに向けての準備に追われていた。
前々から私がこっそりと狙いをつけていたMサイズの家は、計算ではこの週末に手頃なお値段になる。私はこの引っ越しを機会に、半年の歴史が詰まったタンスの中を整頓することにした。がさがさと大きなタンスの中をかき混ぜ、選り分けると、実に色々なものが出てくる。冒険が始めたころに手に入れた、ピンクパール。初めてのフレンドと集めた、するどいキバ。今となってはどうしてタンスに詰めたのか分からないようなモノまで、そこにはたくさんの思い出が溢れていて懐かしかった。手に取り、あぁこれはあの時の、これはあの時の、といちいち思い出に耽る。そんな繰り返しで全然作業が進んでいない。いけない、いけない。私は夜のフレンドとの約束の時間までそう余裕が無いことを思い出し、気を入れてタンスをまさぐる。
その手に、ごわっとした布の感触があった。編まれた古い繊維に特有の、カサカサとした質感。
「あ、これ・・・」
それは、薄紅色に褪せたぬすっとタイツだった。子供用サイズ。その裏地には更に褪せた黒文字で、うっすらと「1年3組 かぷら」と私の名前が記されていた。これ、あのときの。胸に切ない、甘酸っぱいような懐かしい感覚が押し寄せてきた。私はタイツを胸に抱き寄せると、暖かい日が差し込む窓越しから、陽光の反射に眩しい海を見つめた。目を細める。あの日も、こんな天気のいい日だったな。私は20年前のあの日のことを、思い出していた。
当時私の家は、貧しかった。パパは道具職人。腕は悪くない職人であったが、良く言えば優しい、悪く言えば商売っけの無いその性格が悪いほうに作用して、いつまでも家にお金はたまらなかった。そんなパパをかばうように、ママは一生懸命家計をやりくりしていたんだと思う。そのとき私はまだ子供だったから、あまり込み入ったことまではわからなかったけれど、子供心にそれに気づいていたんだろうな。友達が新しい服を買ってもらったとか、ラッカランの大きなコロシアムに連れて行ってもらったとか、そんな話を聞くととてもうらやましいと思ったけれど、一度もそれを両親に言ったことは無かった。
小学校に入って初めての夏、学校でプールの授業が始まることになった。小学校に入って初めてのプールに、私はとてもワクワクしていた。小さい頃にママと近所の公営プールに連れて行ってもらったことはあったけれど、それ以来何年も行ってなかった。この頃の子供にとって何年もという期間は永遠にも等しい。「来週からプールの授業が始まります」と言いながら先生が渡してくれたプリントを持って帰って、帰るなりママに飛びつくようにそれを渡した。
「ママ、ママ、来週からプールなんだって!これ!」
「へぇーそうなんだね、どれどれ・・・ん」
その時、ママの瞳が一瞬、カーテンがおりるように暗くなったのを私は見た。この目は今までにも何度も見たことがある目だった。ママが、お家のことで困った時に見せる目だった。何だろう、プリントに何か、ママを困らせることが書いてあったのかな。
私は凄く不安になって、石のように固まってママを見つめていた。ママはそれに気づいたのか、慌てたようににっこりと笑った。
「よかったね、プール楽しみだね。お母さん、水着ちゃんと用意しとくからね!」
私は胸の中にママのあの目がずーんと重く残っていたけれど、友達と入るプールの期待に、それもいつしか忘れてしまった。
プール開きの前日。
学校から帰ると、ママが待っていた。
「カプラ、明日からプールだよね。水着用意しといたよ」
私は狂喜して、ママに飛びついた。ママが渡してくれた白いビニール袋に、大事そうに入った水着を無我夢中で取り出した。そして、固まった。
それは真っ黒なタイツだった。真っ黒なタイツを両手に持って、じっと見つめる私の視界には、学校のみんなが自慢げに見せていた水着が重なっていた。
「この水着、バトルドレスを使って作ったやつなんだよー!明日すっごい楽しみ!」
「えまちゃんのやつも水の羽衣で作ってあるやつだぁ!かわいいー!」
最近、休み時間のたびに、みんなは奇麗な色とりどりの水着を持ちよって自慢し合っていた。私はそれを遠くから眺めていて、話しかけられないようにしていたんだ。
「カプラ、水着、どうかな?あんまり、気にいらなかった?」
「・・・!!う、ううん!ありがとうママ」
私は、その真っ黒な水着をぎゅっと胸に抱くと、部屋に走った。泣いちゃだめだ、と思ったけど、涙が出てきてしまった。この涙をママに見せるのだけは絶対に駄目だと思って、私は部屋の端っこで、真っ黒な水着を胸に抱えて、声を出さないように泣いた。朝まで、ずっと部屋にこもっていた。ご飯も、「今日は、おなかが空かない」と必死で断わった。ママはきっと心配そうな顔をしていた。
次の日、私は学校にその水着を持っていった。ママはやっぱり、凄く心配そうな顔をしていたけど、私は元気よく「行ってきます!」と笑顔で叫んだ。学校について、3時間目。プールの時間になった。みんなが嬉しそうに水着に着替え始めた。赤、水色、黄色。ふりふりのついたきれいな水着達が私の周りで踊っていた。
「カプラちゃんも早く着替えなよ!プールいこっ!!」
「う、うん・・、あ、あのね。私今日水着忘れちゃった」
「えーカプラちゃん、おっちょこちょい!」
「え、へへ。だから、今日は、私お休みする」
私は震える足で、人生で初めての嘘をついた。手提げ袋の中には、ママが用意してくれた水着がある。心の中で、ママ、ごめんなさい、ママごめんなさい、と何度も呟いていた。私以外一人も居なくなった静かな教室で、私はずっと泣いていた。
家に帰ると、玄関でママが待っていた。ママは悲しげで、とても不安げな顔だった。
「カプラ、今日、プール入らなかったの?」
どうしてバレちゃったんだろう。私は胸がぎゅっと冷たくなって、動けなくなってしまった。そして、もう、涙がこぼれるのを我慢できなかった。ぽろぽろ、ぽろぽろとしたたる涙。でも、何も言えない。ママ、ごめんなさい。ママ、ごめんなさい。
立ちすくんだまま、泣きすくむ私をママはぎゅっと抱きしめてくれた。
「今日ね、丁度お買い物のついでに、学校のそばを通ったから。丁度カプラのプールの時間だな、と思ってね、ちょっと見に行ったのよ」
今考えたら、きっと嘘だろう。ママのお買い物の道とは小学校は全然違う場所だ。でもそのときは、私はそこまで頭が回らなかった。嗚咽まじりに、ママに話した。
「ごめんね、ごめんね、ママごめんね、カプラ、カプラ・・・」
ママはぎゅっと私を抱きしめ続けた。私の肩が暖かく濡れるのを感じた。ママも、泣いているんだと思った。それで私は、泣いてもいいのかなと思って、ついに声を上げて泣いた。ママは私が泣きつかれて眠ってしまうまで、ずっと抱きしめてくれていた。
次の日。
今日もプールの授業がある。私は、お部屋にあった、白いビニール袋をまた手にとった。
手が震えていた。でも、私は手にとった。そして、何ともなしに、その黒いタイツを見ようとして、びっくりした。
黒いタイツは、黒くなかった。ピンク色に、きれいに光っていた。ビニールから、取り出して、拡げる。それは昨日までの真っ黒なタイツから生まれ変わったみたいに、ピンク色に輝いていた。かわいい。とってもかわいい。私は無我夢中で服を脱ぐと、そのタイツをはいてみた。そして、ママの所に走っていった。
「ママ!ママ!」
「あら・・・カプラ、とってもかわいいわよ」
ママはにっこり笑うと、私にピースサインを出した。今なら分かるけれど、ママはその頃開店したばかりの、メギストリスという大きな町の染物屋で、染色をしてきてくれたのだ。当時とても高価であった染色。しかし私はそんなことはつゆ知らず、ただただ、大喜びでママに抱きついた。
「プール入ってくる!!」
「うん、いっぱい泳いでくるのよ」
私はそのまま、タイツの上から服をきて、学校に行った。
プールの時間、誰よりも早く着替えをした。
「わあ、カプラちゃんのピンクの水着、きれいだね!」
友達のえまちゃんがそういってにっこりと笑う。私も、にかーっと笑うと、手をつないでプールに走っていった。
その日から、ママはプール掃除のお仕事を始めた。お仕事を増やしたみたいだった。私も一緒に、プール掃除を手伝った。もちろん、そのときはそのピンクの水着を着て。
お仕事は大変だったけど、私は、幸せな気持ちだった。きっとママも。
それから。
パパはバージョンアップによる家具生産という新しい仕事を得て、家もそれなりに裕福になった。私もこうやって練金職人となり、人並み以上にお金を稼げている。でも、お金がなかったあの頃も、私はとても幸せだった。お金の大切さは誰よりも知っているつもりだけど、それより大切なものがあるってことも、私は誰より知っているつもりだ。
今度の週末、引っ越ししたら、ママとパパも呼んで、引っ越しパーティをやろうと思う。
その時にこのタイツの思い出話でもしようかな。
私はタイツを大事にたたむと、タンスにそっとしまったのだった。
カフェで一人で書いてて泣きそうになった。
ところでポエムDeお金持ち、ついにアレです!
書いてる量よりご依頼いただける数のほうが多い状況で畏れをなしましたので、
一旦注文クローズさせていただきますぅ!!
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COMMENT
無題
初コメ失礼します。。
前々から大好きなブログです。
イコプ様の小説は買いたいくらい好きです。
ポエムも面白くて好きです。
ファンとして会いに行ってみたいものですが・・・恥ずかしいので陰ながらこれからも愛読&応援させていただきますヽ(*´∀`*)ノにゃん
前々から大好きなブログです。
イコプ様の小説は買いたいくらい好きです。
ポエムも面白くて好きです。
ファンとして会いに行ってみたいものですが・・・恥ずかしいので陰ながらこれからも愛読&応援させていただきますヽ(*´∀`*)ノにゃん
とっても良かったよ〜!!
うわぁーん><!感動しました!!実は隠れカプラファンでもあり、とっても良かった〜!DQ10の歴史までもが反映されいて、素晴らしい作品でした。大変良く出来ましたのハナマルです!
もう一回読もぉっと。
もう一回読もぉっと。
Σ(_□_;)!!
本格的すぎてビビりましたΣ(_□_;)!!
てっきり手紙2枚くらいかと思ってたのですが!!
私の幼少期と似てますね!今では成金生活ですか、妙にリアル捉えててリアルなカプラさんかと思ったよ、うん。
ぬすっとタイツ、想像したら吹いたよ(*゚▽゚*)
ありがとっっ。
てっきり手紙2枚くらいかと思ってたのですが!!
私の幼少期と似てますね!今では成金生活ですか、妙にリアル捉えててリアルなカプラさんかと思ったよ、うん。
ぬすっとタイツ、想像したら吹いたよ(*゚▽゚*)
ありがとっっ。
とっても良かったよ〜!!
うわぁーん><!感動しました!!実は隠れカプラファンでもあり、とっても良かった〜!DQ10の歴史までもが反映されいて、素晴らしい作品でした。大変良く出来ましたのハナマルです!
もう一回読もぉっと。
もう一回読もぉっと。
無題
ツイッターから飛んできて最初にぱっと画面を見た時→ 「ながっ(これ注文数作れるの?)」
読んでる時→ 小中学生時代にタイムスリップ(読みながら、あるあると頷く)
読み終わった後→ ほんわり 朝起きたら寒かったのに、今日は温かい気持ちで過ごせそうです
まとめ→ いこぷんは金策ベタ。でも、人の心を動かせる人「朝から泣かせるなょー」
読んでる時→ 小中学生時代にタイムスリップ(読みながら、あるあると頷く)
読み終わった後→ ほんわり 朝起きたら寒かったのに、今日は温かい気持ちで過ごせそうです
まとめ→ いこぷんは金策ベタ。でも、人の心を動かせる人「朝から泣かせるなょー」
無題
発想力がすごいです!
しかも感動作!
私も小説頼めば良かったかなぁ
ただイコプさん!商売っ気ないですねw
これ書くのどれだけ時間かかるんですかw
でも次回作が楽しみですw
バージョンアップで特需来ること祈ってます
しかも感動作!
私も小説頼めば良かったかなぁ
ただイコプさん!商売っ気ないですねw
これ書くのどれだけ時間かかるんですかw
でも次回作が楽しみですw
バージョンアップで特需来ること祈ってます
無題
初コメです。
前々から読んでいて、とても大好きなブログです。
毎日更新を本当に楽しみにしていますっ。
今回の小説も楽しく読ませてもらいました^^
沢山の依頼で大変かもしれませんが、イコプさんが楽しんでかけるペースで頑張って下さいっ(´∀`●)
前々から読んでいて、とても大好きなブログです。
毎日更新を本当に楽しみにしていますっ。
今回の小説も楽しく読ませてもらいました^^
沢山の依頼で大変かもしれませんが、イコプさんが楽しんでかけるペースで頑張って下さいっ(´∀`●)
>ねこ
ありがとうございますう!
か、買いたいくらい!
また注文再開したらご注文くださぁい!1000ゴールドでやっとります!
ファンだなんてこっちが恥ずかしいですがまたどこかで御会いできたらいいですね!
か、買いたいくらい!
また注文再開したらご注文くださぁい!1000ゴールドでやっとります!
ファンだなんてこっちが恥ずかしいですがまたどこかで御会いできたらいいですね!
>うるさん
ちょっとずれますけど、ブログぱっとひらいたときにスライドするカーソルのとこがちっちゃくでると、「あ今日の記事ながいんだ」と嬉しくなることありませんか!ぺけぴの記事が超絶長いときとかワクワクします
金策ベタ!?ちゃうもん!本気出してないだけだもんあしたからホンキダス
金策ベタ!?ちゃうもん!本気出してないだけだもんあしたからホンキダス