- 11/22 [PR]
- 10/23 ブロガーの言葉2
- 10/06 超訳 ブロガーの言葉①
- 04/28 【小説】真の男と漬け物
- 04/20 【小説】7人のおっさん
- 04/07 【小説】ママがプールを洗う日
Title list of 書き物
[1]
[2]
人が人を殺めねばならない時はどんなときかー、いや、そんな仮定がそもそも実感として成り立つのでしょうか。命の尊さはこの日本に生きてきて、いやというほどに聞いてきたでしょう。そしてその尊さを脳髄に刻み込むようなモラルの海に浸かって生きる中で、ぼんやりと海面ごしに揺らいで見える世界があります。
それは戦争。
テレビだとか、新聞だとか、漫画だとか、映画だとか、フィクションのように投影される世界。そこに現実に有ると知っていても、ぼんやりと歪んで見えている。しかし、それはあるのです、確実に。家族を、過去を、友を、夢を持つ個々が、何かを守るために、何かを得るために、同じ人を殺めるために戦う時があるのです。それが善か悪かと断ずる資格は、平和に生きてきた私たちには無いのかもしれません。私たちがそれに関して感じられることは、ただ、悲しいという想いだけなのでしょう。
風桜は言います。悲しいけど、これが戦争なのだと。認めることも、否定することもせず。血に染まる大地に、ただ目を閉じて手をかざすように。
アストルティアの魔法使い
【序章】導かれすぎた者たち、迷宮へ行く。
別離が愛を育てると言います。それは友情においても同じことが言えるでしょう。そばにいることだけが友情ではない。物理的な距離が開いたとき、削られた情報の中で、相手を想像することが必要になります。何を思っているのか、何を考えているのか、何をしているのか。そんなことを考える中で、普段は見えなかったお互いの本当に出会うときがきます。
いい人で終わるのは簡単なことです。しかしそれは自分を守ることと同じことです。本当に大切だと思う相手だからこそ、別離を通じて、依存ではない、信頼を作ることが出来るのです。手首を切っている場合ではありません、バネは伸びてこそ、引力が生まれるのですから。サワッチは無関心を装うように、結ばれない視線を楽しんでいます。誇りと、信頼に満ちた、友情のバネの引力を心地よく感じながら。
酒場スタッフの独り言
プランさんと6人の悪魔超人(オリジナルシックス)
圧倒的な悲しみに襲われた時、どうしても自分では耐えられない悲しみに襲われた時。道理も、言葉も、何も通じない。ただ人は叫ぶしか無いのです。その人を思って、張り裂けんばかりに悲しい声を。それは、自分の奥底から浮かび湧いて出る悲しみを、外にくみ出すような作業です。
キュブラー・ロスは著書「死の瞬間」にて、死という悲しみが受容へ至る心理過程を描いています。その中で、人間が、耐えられない悲しみを受容していくことに意義を見いだそうとしています。しかし、それはあくまで机上の空論ではないでしょうか。
絶望に、受容できる人間などいません。それは全てに諦めた姿を、外から見える人間が都合よく「受容したのだ」と解釈しているだけにすぎない。諦めることが、悪い事なのか、良い事なのかはわかりません。しかしそうなる前に、そう燃え尽きる前に、人は大声で叫んでよいはずなのです。悲しみを、胸が引き裂かれんばかりのこの悲しみを、燃やすかのように、叫ぶこと。それは悲しみを受容して、超然と神様のように笑う人間よりも、いかにも人間的なことではないでしょうか。
プランは、友を失った悲しみを、1つも隠そうとはしていません。彼は神になろうとなど考えていない。生まれたままの、人として、その悲しみに真っ向からぶつかっていくのです。
へんじがないただのしかばねになるブログ
イベントから暗黒暗転
人は残酷なまでに相対的な生き物です。不幸があるから幸せがあり、善があるから悪があり、喜びがあるから悲しみがあるのです。アイデンティティというものは、外界と自分との相対的な立ち位置を示しているのであって、絶対的な自分などは決して存在しえないものなのです。透明な水も、石を投げ入れて波紋をつく事で、その境目がはっきりと見えるようになる。波風1つ立たない世界で、自分探しは出来ません。
人と人との関係が、希薄になってきたと言います。それは神経を失った足が空を歩いているような不安感を生み出しているのかもしれません。そんな透明な世界で、三十朗氏は見えない足下に怯えることもなく、逆に空を見上げたのです。いつか飛ぶから。自分が何者であってもいい。ただ俺は空に飛ぶんだ、と。
強さがいる考え方です。でも、難しいことではありません。自分が何者かなんて、飛んでみたらもはや関係ないのですから。足下ばかり見ているから、怖いのです。怯える必要はないのです。
ただ屹然として、いつか飛ぶ事だけを夢見ていればいいのです。
週刊三十朗物語
翼を下さい(ハロウィンVer
ここまで読んでくださった方ありがとう!ポチ!
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ブログ(blog)は、狭義にはWorld Wide Web上のウェブページのURLとともに覚え書きや論評などを加えログ(記録)しているウェブサイトの一種である。そしてそのブログを書く人、ブログの作者の事を、ブロガーと呼ぶ。(wikiより改編)
ブログを書くということ。
それは魂を削る作業です。
大げさに感じられるかもしれない、しかしそれは確かにそうなのです。
読むは1分のその記事を書く為に、ブロガーは何時間ともいう時間を費やしています。
日常から捻出されるその何時間は、ブロガーにとって、有限の人生を削り取って費やしたもの。
1つの記事は、精神という肉体の一部を、抉りとり、彫琢し、ウェブに叩き付けた、自らの分身とも、そして魂の一部とも言えるものなのです。
その言葉からは、滲んだ血の鉄の匂いすら感じられるような、ブロガーの息づく呼吸すら聞こえるような、深い、深い想いがにじみ出ています。そんな一言一句を、すらりと読み飛ばすのは余りにももったいない事ではないでしょうか。今つと見直してみるだけで、そこには人生のアフォリズムが宝石のようにちりばめられていることに気づくのです。それは平坦な草原に散らばった、ぞろぞろと転がる宝石のように思われます。
私はそれを拾い集めたい。そして磨き、今皆さんに提示したいのです。
その血が滲むような宝石達を・・・
無意味とはなんでしょうか。
意味が無い事、と定義されるその言葉には、しかし意味が無いという意味があります。
無意味は、決して無意味ではないのです。
現代において、「意味」の価値はあまりにも高まりすぎています。子供達は、「なんで勉強をしなくちゃいけないのか」と大人に問いかけ、大人達は「立派な大人になりなさい」と諭します。意味があるから、行動する世の中。意味が無ければ動かない子供、立派という意味に誘導する大人達は、意味に囚われた牢獄の主です。AならばBという連絡が作るこの世の中が、とかく窮屈に感じられるのはなぜでしょうか。
あなたはあなたであってさえいればいい。そんな無意味に意味を見いだした世界を、ぺけぴー氏は見つめていたのでしょう。
無意味があるから、豊かになれる。
意味があるから、心は狭まるのです。
窮屈を感じてはいませんか。効率に囚われすぎてはいませんか。
全ての無意味を、一度無条件に受け入れてみましょう。それはよく見ると、優しく束ねられた花束なのかもしれません。
参照:へっぽこぺけぴの冒険の書 (スパスタ四人蜘蛛の旅)
光があれば、闇がある。
夜があるから、朝が来る。
平坦な人生などありえません。誰しも太陽を見失い、真夜中に怯える日々を過ごすことがあるでしょう。暗い街角に、畏れや不安を抱きながら、目を閉じるのを必死でこらえて、前を向いたその時。貴方は認めるのです、億千と輝く光の瞬きを。
今が最悪の時であれば、それは全てが光り輝く時です。無限にひろがる光の羅列に、あなたは希望を見いだすことができます。明るい空の下に、光は見えないでしょう。
真夜中に、光しか無いと言い切るレオ氏。
涙を通して見える世界は、闇に瞬く光源を、更に光り輝かせていたに違い有りません。
参照:レオのレオによるレオの為のブログ ドラゴンクエスト10 〜そして伝説へ2〜
ブタ野郎。
それは余りにもサディスティックな一言です。しかし、何故かカプラ氏のこの言葉からは、優しさを感じます。
それはラリホーマという眠りの一言があるから?ハートマークがついているから?いいえ違います。それはカプラ氏が、ブタ野郎を愛そうとしているからです。
誰もが崇高な生き方が出来る訳ではありません。ブタのように、泥水の中で眠る人生も、望まないにしてもあり得るわけです。カプラ氏はそんな灰色の生活に、無条件の愛を与えています。ブタでもいい、あなたはブタでもいい。ただ優しく眠りなさい、と。
つまりこれは、圧倒的な微笑。カプラ氏がもつ菩薩のような強さが生んだ、圧倒的な微笑なのでしょう。
人は誰かを支えてあげたいと思う時、とかく励まし、長所を認めてあげようとしがちです。しかし、本来男は無条件の愛でこそ強くなれるのです。ブタですらいいのだから、眠りなさい。
カプラ氏はそうして、男の本能を優しく逆なでするように、毎日応援しているのです。
参照:隣りのカプラさんち (ほぼ全記事)
これシリーズ化したい書いててたのしい!
勝手にフレンドとかのブログから引用していきます!
ちょっとイコプ氏生活のスタイルが変わりまして、あんまり家にいられなくなったもんですから、今後プレイ日記とかよりこういう電車で書けるような記事をたくさん書く気がしますがごひいきにい!
一週間ぶりの更新ですがポチっと宜しくであります。
ポエムでお金持ち
短編小説3 だいや さんよりご注文
真の男と漬け物
なんか気づいたらどっかで見たことあるオチに酷似していた!!
や!違うんだよ!や!パクったんじゃなくて、インスパイアされてオマージュしたのをリスペクトしたんだよ!ごめんなさい!ぺけぴーごめんなさい!気づいたらこうなってたの!!
追記;然ういえば今日風桜のイベントいきます!優勝してきます。
短編小説3 だいや さんよりご注文
真の男と漬け物
キキキ・・・ココココ・・・・
固いギミックの関節は、動かすことを横着にしているとすぐに固まってしまう。固定防止のためのガマの油が支給されているが、あの魚臭い匂いにはどうも慣れない。俺は蝋のように固まりかけた体を、カクカクとほどくように稼働させた。
夜のカミハルムイ。
静寂に鳴り止まぬ、虫たちの声。月は光り輝き、草木に影を落とした。
静かなオーケストラが明暗のコントラストに彩られるように響く。
静かなオーケストラが明暗のコントラストに彩られるように響く。
いつ頃からは俺はこの景色の中に居た。始まりの記憶は定かではない。ただ、この場所の初めての記憶は、「懐かしい」という初めてと対照的であるはずの感覚と一緒に去来した。今ではその感覚も風化して、ただ馴染むいつもの風景となっているが。
「オイ、コウタイノ、ジカンダ」
私は振り返ると、同僚のサワッチに向かって手を挙げた。
今日も何も起こらなかった。俺の任務は、ネルゲル様が仰る「敵」がいつかこの地を訪れる時、この「夢幻の森南部領」を守衛することだ。「敵」とは具体的にはどういう姿形をしているのか、どうして我々にとって「敵」なのか、ネルゲル様には聞いていない。いや、一般兵の俺が聞けるようなことでもないのだが。回りの同僚に尋ねることも出来たのだが、誰もそれに疑問を持っていないようで、話にならなかった。「ワルイヤツ、ワルイ」と。まあそんなものなのかもしれない。そもそも、敵どころか、俺は俺が誰で、何のためにここにいるのかも、分かっていないのだから。考えるだけ無駄な気がする。ただ俺は義務を尽くすのみ。
サワッチといつものように応援のサイレンを鳴り交わすと、俺は休憩に戻ろうと歩き始めた。その時だった。
「テキシュウー!テキ、シュウー!」
俺達の居る草原から少し離れた、カミハルムイ城のやや北のあたり。
夜空に、赤い火花が散っていた。
けたましく鳴り響く伝令兵たちの声。
何かが燃えるような轟音、爆発のような赤。
夜空を染める光と共に、ボスン、ボスンというような低い音が聞こえてくる。
「ワレワレガイク!」
弾かれたように、サワッチとその班員2名の兵隊が、光の方向に飛び出していった。
「サワッチ!」
「リコ・・・ココはタノンダデ!」
「・・・ソウイン、ハイビ!」
俺はサワッチの背中を見つめながら、部下達に指示を出すと、武器を手に取った。
急に激しく稼働させた関節は、キキキと甲高い音を立てる。油を注しておくべきだったが、今更後の祭りだ。2名の部下を背後に従え、俺は少し前傾となる戦闘態勢をとり、構えた。
戦闘準備を取りつつ、草影に消えていったサワッチ達の方向を見つめる。胸のあたりが冷たく締め付けられるようだった。大丈夫だ、サワッチが負ける訳が無い。総毛立つような緊張の中、激しい戦闘音が聞こえてくる。おそらく暫くとも言えないほどの、ほんの刹那の後、大きな爆発音が夜空を切った。それは俺には、手負いの獣が放つ断末魔のようにも聞こえた。
戦闘準備を取りつつ、草影に消えていったサワッチ達の方向を見つめる。胸のあたりが冷たく締め付けられるようだった。大丈夫だ、サワッチが負ける訳が無い。総毛立つような緊張の中、激しい戦闘音が聞こえてくる。おそらく暫くとも言えないほどの、ほんの刹那の後、大きな爆発音が夜空を切った。それは俺には、手負いの獣が放つ断末魔のようにも聞こえた。
ドオォォォオン・・・
「タイチョウ・・・コノオト!」
「・・・ブキヲ、ニギリシメロ」
あの音は、自爆の音。
自爆は、我々が勝てないと判断した時に、最後に残された業だ。
サワッチー馬鹿野郎ー・・・俺より先に、逝くなんてー。
一緒に最高の漬け物を作ろうって言ってたのに、また先にー。
「・・・マタ?」
漬け物?なんだ、俺は急に何を考えているんだ。
突然脳裏に去来した言葉、記憶の断片。
フラッシュバックのように、鉄の頭の中に何かが駆け巡る。
「タイチョウ!キ、キマス!」
呆然と固まる俺の目の前に、「敵」が現れた。
それは4匹の鬼だった。
うさぎのような耳の偽装を施したもの、桃色の張り付くようなタイツをつけたもの。この世の者とは思えない、奇怪な姿であった。まさに、異形の存在ー鬼であった。これが「敵」か。
戦慄と恐怖に体中がすくみそうになる。しかし、負けるわけにはいかない。自爆を果たしたサワッチとの戦闘の直後、傷1つ無いように見えるその鬼達を見て、私は絶望より別に怒りを覚えていた。
「とうろう兵めんどいなぁ」
「逃げてく?」
「ゴールドシャワー!!!」
「おぃ!あなた蜘蛛の前にどんだけ金つかうの!」
突如として空から舞振る金色の矢。
私のそばに居た二人の兵隊は、その矢に全身を貫かれて、音も無く絶命した。穴だらけに空いた体が、うっすらと溶けて消えていく。
「ウ、ウオオオオ!!」
俺はたけやりを握りしめた。全身全霊で一人の鬼の懐まで駆け寄り、そのスライムのような服を来た面妖な鬼に、たけやりを突き立てる。しかし、その皮膚は絶望的な硬度で俺のたけやりをはじいた。化け物だ。
「ベストスマイル!」
「うぜええええ」
男は俺に向けて、突然歯を見せて笑い出す。悪魔の笑みだった。真っ赤に開かれた口もとからは、どす黒い絶望がしたたるように見えた。こんな、こんな奴らにーサワッチはー。
「サワッチ、今、いくで・・・!」
俺はスイッチを押した。全身が熱くなる。ランプが激しく点灯を始めた。最後の舞や。一人じゃ、死なん。こいつら道連れにしてやる!!
「お、おい今このとうろう兵、何か言葉話さなかった?」
「気のせいでしょう、てか自爆しますよ、離れて」
瞬間真っ白になった。
俺は倒れ、静かに横になった。
煙があがる俺のそばに、4匹の鬼が近づいてくる。
駄目やったか。薄れいく意識の傍らで、一人の鬼が俺の壊れた腹部をまさぐっていた。
「お、宝箱ゲットー」
「つけもの石やん、よかった俺最近集めてんのよ」
「でもなんでとうろう兵、つけもの石なんて持ってんだろうね?」
「私聞いたことあるよ。とうろう兵って、もともとはどこかの村人達だったのを、ネルゲルがモンスターに変えて生まれたんだって。それで、もともと土木とか、石とか、そういう仕事をしていた人達がとうろう兵になることが多いとか。このとうろう兵はつけもの屋さんをしてたんじゃない?」
「ちょっとそれは怖い話ですね。元々人間だったってことですか?心が痛むな」
「ま、単なる噂話だけどね。人がモンスターになるなんて、非現実的だし」
「おーい、早く蜘蛛いくよ」
そうだった。鬼が去り、俺は体が消えるその間際に全てを思い出した。
「・・・天国でまた、最高の漬け物をつくったろうな、サワッチ」
闇夜に光る月の中に、あいつの笑顔が見えたような気がした。
完
なんか気づいたらどっかで見たことあるオチに酷似していた!!
や!違うんだよ!や!パクったんじゃなくて、インスパイアされてオマージュしたのをリスペクトしたんだよ!ごめんなさい!ぺけぴーごめんなさい!気づいたらこうなってたの!!
追記;然ういえば今日風桜のイベントいきます!優勝してきます。
ポエムDeお金持ち
なおパンダさんよりご依頼
小説2 「7人のおっさん」
「こんにちはー」
「よろしくお願いします」
「宜しくお願いします」
「宜しくおねがおおおおおうともおうとも大友、康・・・ぐっ、ぐぁああああ」
プランは全身を硬直させ震え始めた。額には玉のような汗が吹き出している。既に限界だった。
「・・・だから貴方には野良パーティなど無理だと言ったのに」
ぺけぴーはため息をつくと、慣れた様子で驚き固まる残りのパーティメンバーに説明を始めた。
「すみません、皆さん、ちょっと彼頭おかしくなってしまったみたいなんで、我々は今日はこのへんで失礼します」
会釈をして、エビのように全身をビクンビクンと震わせ大地に転がるプランを担ぎ上げると、ルーラストーンを光らせた。
「落ち着いた?」
「・・・なんとかぁ」
ここはホテルイーリス。ギガンテスに見守られるベッドの上でプランは介抱されていた。一階からはイーリスが作る暖かいローストビーフの匂いが漂ってくる。ぺけぴーは青白い顔で遠くを見つめるプランの額に、冷たい濡れタオルを載せた。
「ちべたい」
「プランあなたにはもう普通の野良は無理だよ。最初の挨拶だけで禁断症状でてたもん」
「ううむう・・・いうても俺、前までは野良で強ボスとか行ってたんやで?」
プランは最近病気にかかっていた。
いや、病気というのは適切な表現ではない。特殊な癖、とでも言うべきか。アストルティアにはびこる特殊な者たちーあまりにも特殊な一部の個性たちーと触れ合いすぎたプランは、不幸なことにそれに慣れすぎてしまった。変人たちへの耐性を得る代わりに、普通に対する耐性を失ってしまったのだ。いわゆる「普通の冒険」をしようとすると、先のような禁断症状が出る。今日も何とか克服しようと、野良のレベル上げパーティに参加しようとしたが、この有様だった。
「この前は強ボスまでいったけど。ボスみたらどうしても石つぶてしか出来んくなってもた」
「重症ですね、しかし私に出来ることがあれば何でもお手伝いしま、おっと失礼ベイビーが泣き始めた落ちますさらばプランおーよしよしよしよしいい子でちゅねいい子でちゅねきゃわいい!もーキャワイィ世界で一番キャワイイーペロッペロペロッ」
とチャットの残滓を残しながらぺけぴーはその場で額に手を当てると、1秒後には姿を消していた。
プランはため息をつくと、張り付いたような笑顔で微笑むギガンテスを見つめた。
「なんとかせんとあかんなぁ。これは本当にあかんやつや」
ご飯できたよぉと嬉しそうに階段から顔をだしたイーリスがローストビーフを全身に巻き付けて「食べてぇ^^」と迫ってくる。ひどい、と思いながらも、プランは奇妙な安心感で心が満たされていくのを感じた。これは本当にあかん、と改めて呟いた。
次の日、プランは考えた。
いつも頭のねじが飛んだ奴らといるからいかんのや。俺もブログ書く前はもっと普通のプレイが出来てたはず。あの頃を思い出す。あいつらとは距離おいて知らない人とコミュニケーションとってく。俺は生まれ変わる新生プランや。
と、言っても。急にまったく初対面の人と話そうとしても昨日の二の舞になるだけだ。プランは考えた末、「ちょっと知ってるけどあんまり絡んだことが無い人つまりフレンドのフレンドくらいの距離感の人」とのコミュニケーションを試みることにした。
「プックルちゃんにはそういう人を見つけてほしい」
「いきなりどうしたんですかプランさんそろそろかと思ってたけどいよいよ頭おかしくなっちゃったの」
「普通の友達が欲しいねん」
「毛玉に出来ることなら何でもするよ詳しく説明してみなさい」
「かくかくしかじか」
ぷっくるちゃんは神妙な表情で何度もうなづくと、くるりと目を光らせた。
「わかったよプランさん」
「やってくれるかプックルくん」
「いや、僕じゃない。この案件はーイコプさんに頼むべきだ」
イコプ、だと。確かにあいつは俺の唯一無二の親友。誤解されやすい俺のことを真に理解してくれる奴はあいつしかいない、それに正直俺からみても超絶かっこいいしマジでプレイヤースキル半端無いし優しいし頼れるしもうマジいいやつプランあいつと友達になれて幸せです。が、あいつも3Pと呼ばれる同族の男。何故あいつに?
「プランさんは知らないかもしれないけど。いこぷんは普段はとても紳士で素敵な男なんだよ。僕らと一緒にいるときは羽目を外しているように見えるけれど、僕は知ってる。いこぷんは本当は常識を持った男だ。その証拠に、彼のフレンドを紹介してもらえばいいよプランさん、きっと素敵な人が見つかるはず毛玉そう思う」
「ほ、ほうか」
悔しいが認めざるを得ない。俺もうすうす感づいてはいた。あいつは常識を知る男だと。俺たちに無いものを奴は持っている。力を借りようではないか。さっそくフレンドチャットを飛ばす。
「今暇け?」
「マジでもう半端ないくらい暇」
あいつが忙しかったことはないと知っていたが、一応ワンクッションあけておく。よくよく確認するとチョッピ平野で元気玉を使っているよう。よかった暇そうだ。
「今すぐうちに来て」
「御意」
自宅に集まった二人。俺はチョコヌーバから顔だけ出したイコプに相談を持ちかけた。
「・・・というわけだ」
「ごめんちょっと良くわからなかった。ドラえもんに例えて説明してもらっていい?」
「のびた君超ピンチ」
「完全に理解したまるで目が覚めるよう。分かりましたプラン殿、すぐ人を呼ぼう人脈王イコプに全て任せよビールごっくごくぅ」
「神よ」
イコプはさっそくフレンドチャットを始めたようだ。暫くジャンプを読んで待つことにする。5分後画面を見るとまだイコプは交渉中のよう。かなり厳選したメンバーを集めているようだ。10分が過ぎ、20分が過ぎた。
「イコプい?」
反応がない完全に寝たようだ。そういえばビールごっくごくぅって言ってたなあれはこの布石だったかまさに上質なミステリー映画のよう流石だイコプ。
やむを得ん、他のメンバーを探そう。誰かいないか。フレンドリストを見て回るが残念ながらもう誰もログインしていない。平日の午前4時だからな・・・こんな時間にログインしてるのは俺くらいなもんかそういえば明日仕事だったな。と、その時フレンドチャットがチリンチリンとなった。
「ぐもっ!」
モノゴィ氏だ。馬鹿な、おかしい。彼はログアウト中のはず。どうしてログアウト中にフレンドチャットが?まさか灰色の妖精?ベラの使いなの?
「迷宮いきませんか?」
「いこう」
難しいことを考えるのはやめだ。フレンドのフレンドとかもう面倒くさい。彼と一緒に迷宮に行くことで野良の人と一緒になる可能性がある。男プラン、ここや、ここが頑張りどこや!
—魔法の迷宮に入りました−
「宜しくお願いします」
「ぐもっ!」
「よろしく頼むで工藤」
「よろしく!」
マッチングした二人は一人はサワッチというショッキングピンクの仮面の男だった。工藤とは誰のことかと思ったが、どうやら彼は服部の物まねをしているようだ。心地よい。違和感がない。もう一人の男はロッソというエルフのモヒカンだった。スライム服を腹に巻き付けただけのスタイル。野良の迷宮でなんという脆弱な装備。しかし心地よい。違和感が無い。
俺は静かに服を脱いだ。ぐるぐるメガネを装備する。
「行くぞ!うおぉおおおお」
「ぐもーーー!!!
「工藤ぉぉぉぉぉ」
「もひぃー!もひぃー!」
迷宮の2階で全滅した俺たち。しかしその死に顔はとても安らかだった。イコプ・・・俺、やったで・・・、野良のパーティ、克服、したけんのぉ・・・。
—完—
後半の収束感が半端ないなあと思った人ほどクリック!
完全に身内ネタに走っているので分からん人には何のこっちゃかと思いますが知り合いのブロガー様達(おっさんたち)が7人でてくる話を書けばいいんちゃうかと思いました安易と侮るだろうがまさに安易だおっしゃるとおりだ
プラン
ぺけぴー
プックル
イコプ(俺)
ものごぃ
サワッチ
ロッソ
なおパンダさんよりご依頼
小説2 「7人のおっさん」
「こんにちはー」
「よろしくお願いします」
「宜しくお願いします」
「宜しくおねがおおおおおうともおうとも大友、康・・・ぐっ、ぐぁああああ」
プランは全身を硬直させ震え始めた。額には玉のような汗が吹き出している。既に限界だった。
「・・・だから貴方には野良パーティなど無理だと言ったのに」
ぺけぴーはため息をつくと、慣れた様子で驚き固まる残りのパーティメンバーに説明を始めた。
「すみません、皆さん、ちょっと彼頭おかしくなってしまったみたいなんで、我々は今日はこのへんで失礼します」
会釈をして、エビのように全身をビクンビクンと震わせ大地に転がるプランを担ぎ上げると、ルーラストーンを光らせた。
「落ち着いた?」
「・・・なんとかぁ」
ここはホテルイーリス。ギガンテスに見守られるベッドの上でプランは介抱されていた。一階からはイーリスが作る暖かいローストビーフの匂いが漂ってくる。ぺけぴーは青白い顔で遠くを見つめるプランの額に、冷たい濡れタオルを載せた。
「ちべたい」
「プランあなたにはもう普通の野良は無理だよ。最初の挨拶だけで禁断症状でてたもん」
「ううむう・・・いうても俺、前までは野良で強ボスとか行ってたんやで?」
プランは最近病気にかかっていた。
いや、病気というのは適切な表現ではない。特殊な癖、とでも言うべきか。アストルティアにはびこる特殊な者たちーあまりにも特殊な一部の個性たちーと触れ合いすぎたプランは、不幸なことにそれに慣れすぎてしまった。変人たちへの耐性を得る代わりに、普通に対する耐性を失ってしまったのだ。いわゆる「普通の冒険」をしようとすると、先のような禁断症状が出る。今日も何とか克服しようと、野良のレベル上げパーティに参加しようとしたが、この有様だった。
「この前は強ボスまでいったけど。ボスみたらどうしても石つぶてしか出来んくなってもた」
「重症ですね、しかし私に出来ることがあれば何でもお手伝いしま、おっと失礼ベイビーが泣き始めた落ちますさらばプランおーよしよしよしよしいい子でちゅねいい子でちゅねきゃわいい!もーキャワイィ世界で一番キャワイイーペロッペロペロッ」
とチャットの残滓を残しながらぺけぴーはその場で額に手を当てると、1秒後には姿を消していた。
プランはため息をつくと、張り付いたような笑顔で微笑むギガンテスを見つめた。
「なんとかせんとあかんなぁ。これは本当にあかんやつや」
ご飯できたよぉと嬉しそうに階段から顔をだしたイーリスがローストビーフを全身に巻き付けて「食べてぇ^^」と迫ってくる。ひどい、と思いながらも、プランは奇妙な安心感で心が満たされていくのを感じた。これは本当にあかん、と改めて呟いた。
次の日、プランは考えた。
いつも頭のねじが飛んだ奴らといるからいかんのや。俺もブログ書く前はもっと普通のプレイが出来てたはず。あの頃を思い出す。あいつらとは距離おいて知らない人とコミュニケーションとってく。俺は生まれ変わる新生プランや。
と、言っても。急にまったく初対面の人と話そうとしても昨日の二の舞になるだけだ。プランは考えた末、「ちょっと知ってるけどあんまり絡んだことが無い人つまりフレンドのフレンドくらいの距離感の人」とのコミュニケーションを試みることにした。
「プックルちゃんにはそういう人を見つけてほしい」
「いきなりどうしたんですかプランさんそろそろかと思ってたけどいよいよ頭おかしくなっちゃったの」
「普通の友達が欲しいねん」
「毛玉に出来ることなら何でもするよ詳しく説明してみなさい」
「かくかくしかじか」
ぷっくるちゃんは神妙な表情で何度もうなづくと、くるりと目を光らせた。
「わかったよプランさん」
「やってくれるかプックルくん」
「いや、僕じゃない。この案件はーイコプさんに頼むべきだ」
イコプ、だと。確かにあいつは俺の唯一無二の親友。誤解されやすい俺のことを真に理解してくれる奴はあいつしかいない、それに正直俺からみても超絶かっこいいしマジでプレイヤースキル半端無いし優しいし頼れるしもうマジいいやつプランあいつと友達になれて幸せです。が、あいつも3Pと呼ばれる同族の男。何故あいつに?
「プランさんは知らないかもしれないけど。いこぷんは普段はとても紳士で素敵な男なんだよ。僕らと一緒にいるときは羽目を外しているように見えるけれど、僕は知ってる。いこぷんは本当は常識を持った男だ。その証拠に、彼のフレンドを紹介してもらえばいいよプランさん、きっと素敵な人が見つかるはず毛玉そう思う」
「ほ、ほうか」
悔しいが認めざるを得ない。俺もうすうす感づいてはいた。あいつは常識を知る男だと。俺たちに無いものを奴は持っている。力を借りようではないか。さっそくフレンドチャットを飛ばす。
「今暇け?」
「マジでもう半端ないくらい暇」
あいつが忙しかったことはないと知っていたが、一応ワンクッションあけておく。よくよく確認するとチョッピ平野で元気玉を使っているよう。よかった暇そうだ。
「今すぐうちに来て」
「御意」
自宅に集まった二人。俺はチョコヌーバから顔だけ出したイコプに相談を持ちかけた。
「・・・というわけだ」
「ごめんちょっと良くわからなかった。ドラえもんに例えて説明してもらっていい?」
「のびた君超ピンチ」
「完全に理解したまるで目が覚めるよう。分かりましたプラン殿、すぐ人を呼ぼう人脈王イコプに全て任せよビールごっくごくぅ」
「神よ」
イコプはさっそくフレンドチャットを始めたようだ。暫くジャンプを読んで待つことにする。5分後画面を見るとまだイコプは交渉中のよう。かなり厳選したメンバーを集めているようだ。10分が過ぎ、20分が過ぎた。
「イコプい?」
反応がない完全に寝たようだ。そういえばビールごっくごくぅって言ってたなあれはこの布石だったかまさに上質なミステリー映画のよう流石だイコプ。
やむを得ん、他のメンバーを探そう。誰かいないか。フレンドリストを見て回るが残念ながらもう誰もログインしていない。平日の午前4時だからな・・・こんな時間にログインしてるのは俺くらいなもんかそういえば明日仕事だったな。と、その時フレンドチャットがチリンチリンとなった。
「ぐもっ!」
モノゴィ氏だ。馬鹿な、おかしい。彼はログアウト中のはず。どうしてログアウト中にフレンドチャットが?まさか灰色の妖精?ベラの使いなの?
「迷宮いきませんか?」
「いこう」
難しいことを考えるのはやめだ。フレンドのフレンドとかもう面倒くさい。彼と一緒に迷宮に行くことで野良の人と一緒になる可能性がある。男プラン、ここや、ここが頑張りどこや!
—魔法の迷宮に入りました−
「宜しくお願いします」
「ぐもっ!」
「よろしく頼むで工藤」
「よろしく!」
マッチングした二人は一人はサワッチというショッキングピンクの仮面の男だった。工藤とは誰のことかと思ったが、どうやら彼は服部の物まねをしているようだ。心地よい。違和感がない。もう一人の男はロッソというエルフのモヒカンだった。スライム服を腹に巻き付けただけのスタイル。野良の迷宮でなんという脆弱な装備。しかし心地よい。違和感が無い。
俺は静かに服を脱いだ。ぐるぐるメガネを装備する。
「行くぞ!うおぉおおおお」
「ぐもーーー!!!
「工藤ぉぉぉぉぉ」
「もひぃー!もひぃー!」
迷宮の2階で全滅した俺たち。しかしその死に顔はとても安らかだった。イコプ・・・俺、やったで・・・、野良のパーティ、克服、したけんのぉ・・・。
—完—
後半の収束感が半端ないなあと思った人ほどクリック!
完全に身内ネタに走っているので分からん人には何のこっちゃかと思いますが知り合いのブロガー様達(おっさんたち)が7人でてくる話を書けばいいんちゃうかと思いました安易と侮るだろうがまさに安易だおっしゃるとおりだ
プラン
ぺけぴー
プックル
イコプ(俺)
ものごぃ
サワッチ
ロッソ
ポエムDeお金持ち
短編小説1 カプラさんより
ママがプールを洗う日
「カプラ、今日、プール入らなかったの?」
どうしてバレちゃったんだろう。私は胸がぎゅっと冷たくなって、動けなくなってしまった。そして、もう、涙がこぼれるのを我慢できなかった。ぽろぽろ、ぽろぽろとしたたる涙。でも、何も言えない。ママ、ごめんなさい。ママ、ごめんなさい。
カフェで一人で書いてて泣きそうになった。
ところでポエムDeお金持ち、ついにアレです!
書いてる量よりご依頼いただける数のほうが多い状況で畏れをなしましたので、
一旦注文クローズさせていただきますぅ!!
追いついてきたら、また注文再開させて頂く予定ですので、そのときはぜひ!
短編小説1 カプラさんより
ママがプールを洗う日
白昼、一人、住み慣れた部屋の中。
最近私は、週末の引っ越しに向けての準備に追われていた。
前々から私がこっそりと狙いをつけていたMサイズの家は、計算ではこの週末に手頃なお値段になる。私はこの引っ越しを機会に、半年の歴史が詰まったタンスの中を整頓することにした。がさがさと大きなタンスの中をかき混ぜ、選り分けると、実に色々なものが出てくる。冒険が始めたころに手に入れた、ピンクパール。初めてのフレンドと集めた、するどいキバ。今となってはどうしてタンスに詰めたのか分からないようなモノまで、そこにはたくさんの思い出が溢れていて懐かしかった。手に取り、あぁこれはあの時の、これはあの時の、といちいち思い出に耽る。そんな繰り返しで全然作業が進んでいない。いけない、いけない。私は夜のフレンドとの約束の時間までそう余裕が無いことを思い出し、気を入れてタンスをまさぐる。
その手に、ごわっとした布の感触があった。編まれた古い繊維に特有の、カサカサとした質感。
「あ、これ・・・」
それは、薄紅色に褪せたぬすっとタイツだった。子供用サイズ。その裏地には更に褪せた黒文字で、うっすらと「1年3組 かぷら」と私の名前が記されていた。これ、あのときの。胸に切ない、甘酸っぱいような懐かしい感覚が押し寄せてきた。私はタイツを胸に抱き寄せると、暖かい日が差し込む窓越しから、陽光の反射に眩しい海を見つめた。目を細める。あの日も、こんな天気のいい日だったな。私は20年前のあの日のことを、思い出していた。
当時私の家は、貧しかった。パパは道具職人。腕は悪くない職人であったが、良く言えば優しい、悪く言えば商売っけの無いその性格が悪いほうに作用して、いつまでも家にお金はたまらなかった。そんなパパをかばうように、ママは一生懸命家計をやりくりしていたんだと思う。そのとき私はまだ子供だったから、あまり込み入ったことまではわからなかったけれど、子供心にそれに気づいていたんだろうな。友達が新しい服を買ってもらったとか、ラッカランの大きなコロシアムに連れて行ってもらったとか、そんな話を聞くととてもうらやましいと思ったけれど、一度もそれを両親に言ったことは無かった。
小学校に入って初めての夏、学校でプールの授業が始まることになった。小学校に入って初めてのプールに、私はとてもワクワクしていた。小さい頃にママと近所の公営プールに連れて行ってもらったことはあったけれど、それ以来何年も行ってなかった。この頃の子供にとって何年もという期間は永遠にも等しい。「来週からプールの授業が始まります」と言いながら先生が渡してくれたプリントを持って帰って、帰るなりママに飛びつくようにそれを渡した。
「ママ、ママ、来週からプールなんだって!これ!」
「へぇーそうなんだね、どれどれ・・・ん」
その時、ママの瞳が一瞬、カーテンがおりるように暗くなったのを私は見た。この目は今までにも何度も見たことがある目だった。ママが、お家のことで困った時に見せる目だった。何だろう、プリントに何か、ママを困らせることが書いてあったのかな。
私は凄く不安になって、石のように固まってママを見つめていた。ママはそれに気づいたのか、慌てたようににっこりと笑った。
「よかったね、プール楽しみだね。お母さん、水着ちゃんと用意しとくからね!」
私は胸の中にママのあの目がずーんと重く残っていたけれど、友達と入るプールの期待に、それもいつしか忘れてしまった。
プール開きの前日。
学校から帰ると、ママが待っていた。
「カプラ、明日からプールだよね。水着用意しといたよ」
私は狂喜して、ママに飛びついた。ママが渡してくれた白いビニール袋に、大事そうに入った水着を無我夢中で取り出した。そして、固まった。
それは真っ黒なタイツだった。真っ黒なタイツを両手に持って、じっと見つめる私の視界には、学校のみんなが自慢げに見せていた水着が重なっていた。
「この水着、バトルドレスを使って作ったやつなんだよー!明日すっごい楽しみ!」
「えまちゃんのやつも水の羽衣で作ってあるやつだぁ!かわいいー!」
最近、休み時間のたびに、みんなは奇麗な色とりどりの水着を持ちよって自慢し合っていた。私はそれを遠くから眺めていて、話しかけられないようにしていたんだ。
「カプラ、水着、どうかな?あんまり、気にいらなかった?」
「・・・!!う、ううん!ありがとうママ」
私は、その真っ黒な水着をぎゅっと胸に抱くと、部屋に走った。泣いちゃだめだ、と思ったけど、涙が出てきてしまった。この涙をママに見せるのだけは絶対に駄目だと思って、私は部屋の端っこで、真っ黒な水着を胸に抱えて、声を出さないように泣いた。朝まで、ずっと部屋にこもっていた。ご飯も、「今日は、おなかが空かない」と必死で断わった。ママはきっと心配そうな顔をしていた。
次の日、私は学校にその水着を持っていった。ママはやっぱり、凄く心配そうな顔をしていたけど、私は元気よく「行ってきます!」と笑顔で叫んだ。学校について、3時間目。プールの時間になった。みんなが嬉しそうに水着に着替え始めた。赤、水色、黄色。ふりふりのついたきれいな水着達が私の周りで踊っていた。
「カプラちゃんも早く着替えなよ!プールいこっ!!」
「う、うん・・、あ、あのね。私今日水着忘れちゃった」
「えーカプラちゃん、おっちょこちょい!」
「え、へへ。だから、今日は、私お休みする」
私は震える足で、人生で初めての嘘をついた。手提げ袋の中には、ママが用意してくれた水着がある。心の中で、ママ、ごめんなさい、ママごめんなさい、と何度も呟いていた。私以外一人も居なくなった静かな教室で、私はずっと泣いていた。
家に帰ると、玄関でママが待っていた。ママは悲しげで、とても不安げな顔だった。
「カプラ、今日、プール入らなかったの?」
どうしてバレちゃったんだろう。私は胸がぎゅっと冷たくなって、動けなくなってしまった。そして、もう、涙がこぼれるのを我慢できなかった。ぽろぽろ、ぽろぽろとしたたる涙。でも、何も言えない。ママ、ごめんなさい。ママ、ごめんなさい。
立ちすくんだまま、泣きすくむ私をママはぎゅっと抱きしめてくれた。
「今日ね、丁度お買い物のついでに、学校のそばを通ったから。丁度カプラのプールの時間だな、と思ってね、ちょっと見に行ったのよ」
今考えたら、きっと嘘だろう。ママのお買い物の道とは小学校は全然違う場所だ。でもそのときは、私はそこまで頭が回らなかった。嗚咽まじりに、ママに話した。
「ごめんね、ごめんね、ママごめんね、カプラ、カプラ・・・」
ママはぎゅっと私を抱きしめ続けた。私の肩が暖かく濡れるのを感じた。ママも、泣いているんだと思った。それで私は、泣いてもいいのかなと思って、ついに声を上げて泣いた。ママは私が泣きつかれて眠ってしまうまで、ずっと抱きしめてくれていた。
次の日。
今日もプールの授業がある。私は、お部屋にあった、白いビニール袋をまた手にとった。
手が震えていた。でも、私は手にとった。そして、何ともなしに、その黒いタイツを見ようとして、びっくりした。
黒いタイツは、黒くなかった。ピンク色に、きれいに光っていた。ビニールから、取り出して、拡げる。それは昨日までの真っ黒なタイツから生まれ変わったみたいに、ピンク色に輝いていた。かわいい。とってもかわいい。私は無我夢中で服を脱ぐと、そのタイツをはいてみた。そして、ママの所に走っていった。
「ママ!ママ!」
「あら・・・カプラ、とってもかわいいわよ」
ママはにっこり笑うと、私にピースサインを出した。今なら分かるけれど、ママはその頃開店したばかりの、メギストリスという大きな町の染物屋で、染色をしてきてくれたのだ。当時とても高価であった染色。しかし私はそんなことはつゆ知らず、ただただ、大喜びでママに抱きついた。
「プール入ってくる!!」
「うん、いっぱい泳いでくるのよ」
私はそのまま、タイツの上から服をきて、学校に行った。
プールの時間、誰よりも早く着替えをした。
「わあ、カプラちゃんのピンクの水着、きれいだね!」
友達のえまちゃんがそういってにっこりと笑う。私も、にかーっと笑うと、手をつないでプールに走っていった。
その日から、ママはプール掃除のお仕事を始めた。お仕事を増やしたみたいだった。私も一緒に、プール掃除を手伝った。もちろん、そのときはそのピンクの水着を着て。
お仕事は大変だったけど、私は、幸せな気持ちだった。きっとママも。
それから。
パパはバージョンアップによる家具生産という新しい仕事を得て、家もそれなりに裕福になった。私もこうやって練金職人となり、人並み以上にお金を稼げている。でも、お金がなかったあの頃も、私はとても幸せだった。お金の大切さは誰よりも知っているつもりだけど、それより大切なものがあるってことも、私は誰より知っているつもりだ。
今度の週末、引っ越ししたら、ママとパパも呼んで、引っ越しパーティをやろうと思う。
その時にこのタイツの思い出話でもしようかな。
私はタイツを大事にたたむと、タンスにそっとしまったのだった。
カフェで一人で書いてて泣きそうになった。
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