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DQ10で活動中の魚人。 チーム「コスポ・ミ・レイジュ」所属。
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こたつとちからの指輪物語① 「罪と罰」(2013/1/25)




たつと力の指輪を取りに行くことになった。
 ただ少し眠たかったので、1時間だけ寝てから行くねと約束した。
 そうあれが確か8時頃のことだった」









「起きたら午前2時だった」




こたつと力の指輪物語②「掴め、その震える手を」(2013/1/26)

目覚めた私は、その日の仕事を粛々とこなし、帰途についた。
ドラゴンクエストをやろうと固く心に誓いながら。

「今日こそ、こたつと力の指輪を取りにいくんだー」

果たされなかった約束は宙にぶら下がったまま、行き場なく揺れている。
冷たい風に吹かれて、所在なく、とても儚げに。
それは枯れ木に残る一枚の葉のように弱い。


しかし、在る。
まだ決して消えることなく、息づいているのだ。
私はそれを殆ど強迫的に信じていた。









やむを得なかった。


あの日は確かに、人独りの力ではどうにもすることの出来ない剛たる力によって、私の意識は奪い取られてしまった。
そこに抵抗の余地はなかった。
ーしかし、それは空白の画面上に浮かぶ言い訳にすぎない。
ディスプレイを隔てた遠い所で、こたつは、ずっとー待っていた。





凍えながら?

暗い部屋の中で、一人画面に向き合い、震えていたのかもしれない。



(イコプは来る、きっと私と力の指輪を取りに、戻ってくる)




白い吐息で声にならない声をつぶやきながら、薄い毛布に包まれて、画面の薄明かりに照らされていたのだ。

その光景が目の裏にまざまざと浮かび、私は悔やんだ。
両手をぐっと握りしめる。



「こたつ・・・俺に、俺にもう一度だけチャンスをくれよ。今度こそ、俺、がんばるから。
 お前が力の指輪を取って、画面の向こう、潤んだ瞳で、でもにこって笑う。
 俺はその笑顔を、取り戻したいんだ」




玄関をあけるとクリームシチューの良い匂いが漂ってきた。
暖かい部屋の湿度が、俺の心を少し慰めた。


「ごはん、出来てるよ」

相方も少し、その笑顔は遠慮がちだった。
うん、わかってるよー。俺は視線でそう返すと、うなずいた。

食事を終えた。
俺は電源のまだ入っていない、黒いテレビ画面を見つめながら言った。

「今日は、力の指輪を取りにいく」
「うん・・・、きっと、こたつ、待ってると思う。
 今日はまだ、ログインはしていないみたいだけど」

フレンドのログイン状況を確認できる、3DSの画面を見ながら相方は答えた。
俺はうなずく。

例え抗えない何かがあったとしても、人はそこに抗おうとする。
消して開かない鉄格子を開こうとする囚人も、そこに希望を見いだす。
希望は、力だから。

「やれるだけのことはやっておきたい。夜に備えて、少し仮眠をとるよ」
「・・・わかった」

相方は微笑むと、私の肩をポン、と叩いた。




私は布団に入った。


こたつ・・・待ってろよ










気づくと、朝だった。







「あれ?」



「あれ?あれ?朝だよ?」
「うん絶対おきないと思ってた(もぐもぐ)」
「卵掛けご飯おいしそうだね!」
「まだシチューもあるよ!」

とさわやかな土曜日が今日も始まりましたイコプですこんにちは!
ということで今日も朝も早くから迷宮に行ってきましたー!



こたつと力の指輪物語③ 「完結編」(2013/2/20)

でこぼことした露頭がそびえる。鉱物に占められたやせた土を、強い風が抉るように吹いていた。そこにほのか疎らに見える緑の植物達は、不毛な大地に根を張ることを選んだという強い意思を感じさせる。

 ここはエゼソル峡谷。自然の厳しさと、生命力が相見える地。


「取れる・・・かな」

 足元に転がる小さな石をじっと見つめながら、聞こえるか聞こえないかの中間くらいの声で、こたつは呟いた。震える語尾が吹きつける風に溶けて消える。それは来る誰かの返答に怯えているかのようだった。俺はすっと息を深く吸い込み、呼吸を止める。そして答えた。

 「取れるよ。いや、取る」
 「ーうん」

 交わる会話と裏腹に、視線は交差し、結ばれなかった。しかしそれは今に限ったことではなく、あの日を境に、今日までずっと続いていることだ。消して溶けあわない二つの気持ち。迷宮に行こう、ボスを倒そうと半ば無理矢理に撹拌させても、残酷なまでに静かに分離していく。冷たい水と、冷えた油のように。

 「大丈夫だよ、レアドロだって、あるしね!さ、行こう!」
 レイシャは大げさなくらい明るい声で、呟いた。ほら、大丈夫、と笑顔で俺にうなづく。気にかけさせてごめんな、と俺は苦笑で返すと、眼前に広がる大きな池を見つめた。陽光に煌めく反射がまぶしい。

 こたつ、池が光って、まぶしいな。

 後でそんなたわいもない会話をしよう。俺たちの間に取り戻したいのは、そんな小さな会話なんだ。とてもたわいもない、だけどとてもかけがえの無いことなんだ。
 俺はパンパンと頬をうつと、叫んだ。

 「行くぞ!ちからの指輪、取る!」





 その日、チームにログインしていたのは4人。こたつ、レイシャ、キキ、そして俺だ。エゾセル峡谷でレベルをあげていたレイシャが、俺を誘った。
 「一緒にレベルあげ、しない?」
 「ん、いいよ、行こうか。またレイシャは変なところでレベルあげてるねw」
 「冒険なんだよ。他に誰か来る人いる?」
 「エゾセルってどこだっけ?」
 僧侶のキキが尋ねた。エゾセルでレベルをあげる人は中々いない。地理的にも大きな町からは比較的遠く、あまり普段はなじみがない場所である。ただ、そこは最近、あるレアアイテムで有名になりつつあった。

 「ボストロールがいるところだよ、ほら、ちからの指輪で有名な・・・あ」

 禁句、ではない。しかし、暫くぶりに聞いた言葉だった。誰もが意識して避けていたその話題。流れる気まずい、空気。こたつが口を開いた。

 「力の、指輪!ね!」
 「おうおう力の指輪なー!大事なやつだよなー」

 俺はなんと言っていいのか分からず、しかしなんとか絞り出した言葉はまったく内容の無いものだった。キキとレイシャは画面の向こう側で固まっている。静かに動きを止めたチャット欄。手のひらに冷たい汗がにじみ出てきた。

 しかしー。これは、最後のチャンスなのかもしれない。俺は思った。こたつと俺の乖離は、「家族のようだね」と揶揄されるほどのコスポミレイジュの中で、冷たい影を落としていた。あの悲劇の日以来、小さな歯車が狂い始めて以来、大きな全体も少しずつきしみ始めていた。完全に見える一枚岩も、強い一点の衝撃には弱い。一つのひび割れが、修復することなく大きくなるのを、もう黙って見ている訳にはいかない。取り戻そう、俺たちの一枚岩を。これが最後のチャンスだ。

 そう思う裏腹に、キーボードを打とうとする俺の手は固まっている。俺は同時に理解していた。失敗すればもう後がないことを。もしこれで手に入らなかったら?こたつの心はどうなってしまうのだろう。こたつが俺を思う気持ちは、どうなってしまうのだろう?想像するのも怖かった。活動停止。しかし俺は画面の向こう側でおそらく同じように固まっているこたつのことを考えた。

 きっと今、こたつは震えている。そして怯えている。

 その時、脳の他の部分がこたつと出会ったときのことを思い出させた。あれはオルフェアで、レベルあげの募集をしていた時のことだ。まだチームを作るお金も無かった。小さなプクリポの武闘家を見かけて、一緒にやりませんか?と尋ねたとき。なんてテンションの高い人がいるんだと思った。それからずっと一緒にいるようになるなんて、そのときは思わなかったけど。
 
 たった6人で始めたチーム。それから殆ど毎日のように、色々なところに行った。キークエストをやったり、かばんを拡げたり。今ではあんな弱く感じるリザードマンも、あの時はどうしても倒せなくて、みんなで考えた末にこたつが外からずっと応援してくれて、やっと倒せたこともあった。あの時は本当に嬉しかったな。

 あの頃と、今。
 どこか違っている。それはやっぱり、俺とこたつの間に出来てしまった、冷たい溝みたいなものなんだろう。俺は悔しくなった。恥ずかしいことだけど、目に涙がにじんできた。あの頃に、戻りたい。俺たちはこんなんじゃない。友達?違う。俺たちは会ったことも無いけど、家族だったはずなんだ。家族が離れるなんてことが許せるわけ、無いだろう。



 「こたつ、ちからの指輪、取りにいこう」



 沈黙が流れた。
 1秒だったかもしれないし、1分だったかもしれない。
 俺は瞬きするのも忘れ、黄色いチームチャットの画面を見つめた。
 刹那の永遠だった。

 こたつの返事が表示された。





















 「行きたい」






















 こたつ。
 俺、今度こそがんばるから。




ーーーーーーーーーーーーーーーー


 

 ボストロールは手強い。
 痛恨の一撃は、たったの一撃で容易に命を奪う。
 メイン僧侶のキキの巧みな回復をもってしても、その連戦はMPを奪う。魔法の小瓶がみるみるうちに減っていった。
 「次こそ出るよ!」
 「だね!」
 キキとレイシャが鼓舞してくれる。「そうだな」「絶対出る!」と繰り返す俺たちも、冷徹に過ぎ去る時間と共にその言葉の真実身が失われていくのに気づいていた。ぬるり、という表現がふさわしいだろう。俺は必死で気づかないようにしていたその感覚が、ぬるりと、脳髄に迫り来たことに怯えていた。馬鹿野郎・・・イコプ、おいイコプ・・・お前、それでいいのか?まだやれるだろう、まだ、倒れる訳にはいかないだろうーしかしー俺はもう充分がんばったんじゃないかーこれだけやったならもうー




睡魔



悪魔の名を関するその表象名詞。

生物が脳という高次機能を持つことの代償に嫁せられた、絶対の制約。
脳幹という生命の中枢に直接叩き込まれる、巨人の一撃。それが眠りという、悪魔。


「イコプ・・・?」

動きを止めた俺に、いぶかしげに表示される問いかけの言葉。
馬鹿な、違う、俺はまだやれる。

「大丈夫、さあ、次に行こう」
「イコプ、無理、しな」
「行けるって言ってるだろ!!・・・ごめん、さあ、行こうあそこにもいる」
「・・・」

テレビのボリュームを最大にする。
あらゆる刺激を総動員する。頬を叩くだけでは手ぬるい。暖房を切る。窓を開けよう。コーヒーを一気のみだ。手ぬるい。上着を脱ごう。いける、まだ行ける。俺は、まだ戦える。

「盗む、さあ、盗むぞ」
「イコプMP!」
「ああ、そうだった小瓶だよな、ん、そう、小さな、小瓶」

限界が近かった。もう駄目かと思った。
しかし、薄れ行く意識の裏側に、張り付いたように見える世界があった。




ー力の指輪をとって、涙をいっぱい貯めて、でもにこって笑う、その笑顔ー

ーその笑顔を、俺は、取り戻したいんだー

ーこたつの、その、笑顔をー

うつつと現実の中で相見える世界で、その笑顔だけが俺を奮い立たせる。







ーその笑顔をー







ーその笑顔をー







ーその、笑顔をー













チリリーン






音がした。

静かに、流れる時。






誰もが目を疑った。そして怯えた。

金色に煌めく宝箱に、近づくことすらできない。メダルだったら。

俺は動くことができなかった。開けられない。これがメダルだったら、もう・・・



固まるレイシャ、キキ、そして俺。しかしそのとき、こたつは静かに宝箱に近づいて行った。
その姿は俺にはスローモーションのように見えた。

宝箱の前で、固まるこたつ。

俺は目を閉じた。




そして、ゆっくりと、目を開ける・・・
















・・・

やりやがった・・・

ははっ・・・やりやがった!!!

やりやがったよ俺たち!





涙で画面が見えない。

こたつに駆け寄る3人。こたつ、お前今どんな顔してんだ。

いやどんな顔でもいい、こたつ!にこって、笑ってくれ!





















































こたつ「みんな・・・ありがとう!」













=こたつと力の指輪物語=
























おまけ エピローグ



ヴェリナード

「さー合成しましょうかね」



攻撃力プラス攻撃力プラス神様仏様なむみょーほーれんげきょーぶつぶつ攻撃力プラス・・・



合成おねがいしまーす よーしこたついけー!!






・・・ 

こたつ・・・さん?








こたつ「守備力+1」







・・・














=本当に完=






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 何度見てもいいねっ
楽しいお話がひとつにまとまっていて
大変読みやすかったです!
こんな時間に起きてしまう
寂しい年寄りは、優しい心遣いだと感じ入りましたっ

おこた神が歓喜の声を上げているときに
イ○○さんが離席マークなのは
やはり何か深いものがそこに
横たわっているのでしょうねっ
NONAME 2014/10/17(Fri)05:40:40 編集
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